SACDの現況と将来

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今更、SACDな訳  

               

SACDは1999年に誕生

SACD1999年にCDの次世代フォーマットとして誕生しました。だから、2022年時点ですでに23年経ったメディアであると言えます。通常CDがリニアPCM 16bit/44.1KHzなのに対しSACDは、ダイレクトストリームデジタル1bit/2.8224MHzで通常CD4倍のデータ量でCDより高音質な再生が可能なメディアです。

しかしながら充分に普及したメディアだとは言えません。普及しなかったのには様々な理由があります。

 

普及しなかった理由

SACDDVD-A陣営の対立が有った

SACDSONYが中心となって立ち上がったメディアですが、同時期にDVD-A(デーブイデー・オーディオ)という高音質次世代メディアが、パナソニックや日本ビクターが中心になって立ち上がりました。昔のビデオテープのVHS方式とβ方式の対立のようなものですが、SACDDVD-A両者痛み分けのような状態でどちらも普及しませんでした。DVD-Aはもはや消え去ったも同然のメディアですが、SACDは細々と生き残っています。

SACDの再生には専用のSACDプレーヤーが必要

SACDをかけられるプレーヤーが高価なのが普及を妨げた一因です。通常のCDであれば数千円からある再生機器ですが、SACDだと数万円以上で、それ以外のスピーカーやアンプもそれなりのハイグレードのものを用いないと高音質だというSACDの優位性が発揮できません。なので、音質にこだわる人向けのニッチなメディアになって行ったのは必然だったと思われます。なお、ほとんどのSACDプレーヤーは通常CDもかける事が出来ます。 

SACDはリッピングが出来ない

SACDはコピープロテクトがかかっていて、普通のCDのようにリッピング出来ません。パソコンで読めないメディアなのです。2000年代初頭から、CDをパソコンでリッピングし、そのデータをI-PODに入れてイヤホンで聴くという音楽再生が流行りだしました。そのような方法が全く出来ないのがSACDなのです。なので、1枚でSACD層とCD層を持つハイブリッド盤が登場してきました。CD層は通常のCDと同じなのでCD層はリッピング出来ますし、通常のCDプレーヤーでも聴けます。ただしそれは当然CDのクオリティです。

発売されたソフトの数が少ない

オーディオに興味があって良い音質で音楽を聴きたいと思っても、発売されるソフトが少なければそのメディアの魅力はありません。大手のレコード会社からもSACDソフトの発売タイトル数は増えませんでした。

発売されたソフトのジャンルに偏りがある

折角高音質のSACDで発売しようとする音楽は、元の音源の音質が良いもので、当然、そういう音楽を良い機器で聴こうとするものが多くなります。結果的に、クラシック音楽が全体の8割位を占めるようになりました。ジャズやロックのSACDもあるけれど、タイトル数は多くありません。なので、家でクラシック音楽を良い音で聴きたい人にはSACDはまだまだ生きているメディアですが、クラシック音楽を全く聴かない人達にとってはもはや不要なメディアと言われても仕方が無いと思います。

登場から10年経ってSACDソフトの発売点数が減ってくる

2010年前後頃になると、2000年代初頭と比べ明らかにSACDソフトの発売点数が減ってきます。代わりにハイレゾのネット配信が始まります。CDを上回るハイレゾ・データがダウンロードで買えて、それがパソコンやネットワーク・オーディオプレーヤーなどで聴けたり、ハイレゾ・ウォークマンなどを使って外出した時にも聴けるようになりました。ダウンロード販売のハイレゾの方が利便性が良いので、流石にこれでSACDは灯が消えると思ったものでした。

 若干、復活の兆しが見え盛り返してきた

オーディオ専業メーカーなどがSACDソフトを制作販売するようになる

2007年になってハイエンド・オーディオ・メーカーのEsotericが、古いクラシック音楽の音源をレコード会社から借りてSACDソフトを限定販売するようになりました。これが音質の良さで評判となりタイトル当たりの販売枚数もかなり多く、販売終了後も人気があるため、中古盤などがネットオークションなどで非常に高価で落札されるようになりました。また、レコード販売のTOWER RECORDSが独自にSACDソフトを企画制作販売するようになりました。STEREOSOUNDというオーディオ雑誌の出版社も高音質なSACDを販売し始めました。

現状、SACDでは売られているのにハイレゾには無いものや、SACD/CDハイブリッド盤で売られているのに通常CDが無いものもあります。

ハイレゾの普及がSACDソフトの売上げ向上につながった

2015年頃からいったんは少なくなったSACDソフトの売上が少しずつ多くなり始めました。ダウンロードやストリーミングに飽き足らない人たちがアナログ・レコードに注目しだして売上が多くなってきたのと同様です。ハイレゾファイルのダウンロードだと物を所有しているという実感が希薄です。ジャケット写真もデータだし解説書などはありません。SACDソフトはハイレゾ相当の高音質なメディアです。物としての価値が認識され、それ故に見直されてきているというのが2022年時点での状況だと思われます。


【SACD普及委員会】 #01 SACDとは?

 

私の場合は

CD再生を優先、SACDは眼中に無かった

SACDが登場した当初は、SACDは普及するかどうかもわからない。だから、豊富にあるCDソフトをしっかり再生させる方が良いと思っていました。だから、SACD誕生当時、CD専用のトランスポートとDAコンバーターを導入するなど全くSACDに興味はありませんでした。

2003年に書いたSACD、DVD、CDの将来は?も御覧ください。

でも、いつの間にかSACD/CDハイブリッド盤が手元に多くなっていた

SACDが聴ける環境に無かったのでCDを買っていましたが、ものによってはSACD/CDハイブリッド盤でしか発売されていない音源もあったのでそういうものを購入したり、EsotericSACD/CDハイブリッド盤のCD層は従来のCDより音質の良いものが多かったので、ほとんど出れば買う状態でした。

TOWER RECORDS
が出すSACD/CDハイブリッド盤もCD層も丁寧にリマスターされているものが多く
欲しいと思ったものは手に入れていました。なのでSACDプレーヤーが無いのにも関わらず、手持ちのSACDソフトは増えていったのです。現状、SACD/CDハイブリッド盤は手元に500枚ほどあります。

2017年 DAコンバーターを新調しハイレゾを聴き始めた

DAコンバーターは進歩が早く音質向上していたため、DAコンバーターを新しくしました。そのDAコンバーターはEsoteric D-05Xです。USB入力もあるのでパソコンを繋ぎ、ハイレゾファイルの再生も始めました。そのコンテンツはこちら。  
Esoteric D-05X  従来のCD再生と、パソコンによるハイレゾ再生の共存

結局、SACD用トランスポートも購入

ハイレゾをダウンロード購入していくうちに、SACDでは発売されたのにハイレゾ・データでは売られていないコンテンツも結構あるのに気が付きました。ならばと、購入したのがD-05Xと対になってSACD再生に本領発揮できるP-05Xも導入しました。

現状では、通常CDの再生ではP-0sVUKD-05XXLRダブルワイヤー接続)を用いています。その方がP-05XD-05XHDMIダブルワイヤー接続)でCDを聴くよりもクオリティが高いのです。なので、P-05X通常CD再生には用いずSACDを聴くときだけ使っています。音の滑らかさ、濃淡の表現力、音色の再現性はP-05XとD-05Xで聴くSACDは素晴らしいです。 
     
EsotericP-05XとD-05Xの組み合わせ。上はハイレゾデータ再生用のパソコン。

 SACDの未来は明るくないのだが

そのようなわけで、例えSACDの新規発売が止まり死に絶えた状態になっても、手元にあるSACDソフトは聴けるようにしておきたいと思っています。