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 EL34/6CA7シングルアンプ




シャーシを買ってしまった

300Bシングルアンプが解体され、TANGOの FW-20S、MC5-250D、MX-205というトランスが残った。ヤフー・オークションを見ていたら、こんなシャーシが安く出ていたので買ってしまった。1.2mm厚の鋼鉄製で、サブシャーシも付属していて出力管と整流管は落とし込む構造で、なかなか凝っている。残ったトランス類がバッチリピッタシカンカンで搭載できる穴がすでに開いていて、新たな穴あけの必要が無いものだ。ただし、塗装仕上げは必要、でもスプレーで吹くだけだから簡単。3C33単管PPアンプを作ったときにトランスを着色した銀やクリヤーのスプレーが残っているからそれで塗ればいい。

アンプを増やさないように300Bアンプはせっかく解体したのに、またアンプが増えてしまうではないか。増えてしまったら顰蹙ものなのに。ああ、おかあちゃんが恐い。

 




使っていないEL34/6CA7

このシャーシで何のシングルアンプを作るか?また300Bにするのか、いや、ヒータートランスを買い増せば2A3シングルにも簡単に出来る、いや46でも良い、多極管ならEL34でもと悩んだが、結局手元にEL34が何種類かあり、しかも茶ベースのムラードが3本、旧テスラ2本、松下2本などというように、プッシュプルで使えるだけの数が揃っていないものもあり、中古も多く特性もばらついていて、シングルアンプにしか使えないものもあるので、これでいくことにした。






着せ替えアンプ

そこで、ぺるけ師匠のシングルアンプ・プロジェクトのコンテンツを参考にさせていただき、普通の自己バイアスと同じように無調整で出力管を挿し換えることができる定電流バイアスEL34シングルアンプを作ることにした。 小さい女の子が着せ替え人形で洋服を取り替えて遊ぶように、様々なEL34を手軽に取替えて遊ぶ「着せ替えアンプ」である。EL34/6CA7の特性がばらついていようが、くたばりかけていようが、この回路だと常にEL34/6CA7には約69mAの電流が流れる。



 


CR部品は、手持ちのものを最大限活用し、300Bシングルアンプを解体して出てきた抵抗やコンデンサも使っている。廃物利用だ。



前段の6SL7SRPPの上下のカソード抵抗値が不揃いだが、わざと前段を歪ませてある程度出力段の歪を打ち消そうという意図。
また、電源部に傍熱型整流管を使わずダイオードで整流する場合には、遅延回路を入れるなど工夫しないと、立ち上がり時にLM317Tに高電圧がかかって破壊されると思うので、この回路を参考にされる方は注意が必要である。



出力管のカソードに定電流回路を入れる理由

出力管のカソードとOPTのBがコンデンサで結ばれ、信号経路が短くなっている。出力段の信号ループが電源のコンデンサと完全に分離され、低域のクロストークを少なくすることが出来る。

通常の自己バイアスの回路だとカソードパスコンで交流的にアースされ、そこから信号が電源のコンデンサに入る。電源のコンデンサが信号ループの経路を兼ねているので、電解コンデンサのインピーダンス特性の大きくなる低域のクロストークが大きくなる。それをある程度防ぐためにSG−50シングルの回路では、出力段の左右の電源も抵抗で振り分けてあるのだが、本機の回路ではその必要が無い。

また本機の回路で出力管のカソードに定電流回路を使わず普通に抵抗を使ってバイアスを得るなら、この抵抗から信号が電源部に漏れることになるが、定電流回路にすれば交流は通さないので信号は電源部には漏れず、出力段の信号ループは完全に閉鎖的な状態となる。これが定電流回路を入れる本当の理由。




リップル増幅器となる欠点を持つ

チョークを出たあともう一段抵抗とコンデンサでフィルタを構成しているが、これがないと無帰還では残留雑音が1.5mVと、AC点火の2A3シングル並みに多くなってしまう。雑音成分のほとんどは120Hz。一般のシングルアンプ並のリップル対策で普通に作ると残留雑音が多くなり、AC電源のドリフトも多く出てくる。残留雑音が多くなる理由は、普通の自己バイアスの回路のようにカソードとアースをコンデンサで結べばカソードとグランド間のリップルがアースされ出力されることはないが、本機の回路だとカソードとグランド間(グリッド間)のリップルが増幅されて出力されてしまうから。これがこの回路の最大の欠点だ。要はへんてこな回路なのだ。だが、充分にリップル対策をして実用上問題ないまでに残留雑音が下がると、普通の自己バイアスのシングルアンプにくらべ、低音の質感が非常に良く抜けの良い分解能のいい音を聴かせてくれる。




特性

最大出力5W 0.62V入力時 

NFB約4dB 

残留雑音約0.3〜0.4mV ドリフト0.3〜3.5mV 8Ω固定抵抗負荷補正なし

F特 1W出力時 高域 -3dB 75KHz  -6dB 100KHz

            低域  12Hzまでほぼフラット






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