無帰還トランスドライブ、出力24.5W 50PPアンプ
50という真空管とその他の使用球についてWE300B(左)と本アンプに使用したRCA’50(右) ![]() WE300BとRCA’50は、このように外形は、共にST19という規格で同じだ。
’50は、300Bより開発が古いのでシングルA1動作させた場合、450V(自己バイアス分を加算すると約535V)という高電圧でも4.6Wしか出ない。後発の300Bは350V(自己バイアス分を加算すると420V)で7W程度と、低電圧で出力が多く取れて効率が上がっている。しかし、現代の回路技術でA2級までドライブすれば、シングルでもWE300B並みの出力を得るのは困難ではないし、もともとグリッド電流の流れやすい’50はWE300BよりもずっとA2級ドライブに向いている。だから、効率や出力の不利は現代ではあまり問題にならない。
故浅野勇氏は、その著書「魅惑の真空管アンプ」で、『今、アマチュアにも入手できるようになったウエスターンの300Bなどは戦前の民生機用として全く販売されていなかったので、アマチュアが300Bによるアンプを組んだという記事をみかけませんでしたが、よしんば300Bが市場で入手し得たとしても’50アンプの人気は毫もこれによって左右されることはなかったものと思われます。』と書いている。
前段に用いた6H30Pi
![]() 250や’50が活躍した時代には、負帰還という回路技術が無かったので、真空管という素子の裸特性の良さで歪を少なくすることが大切だった。だから、’50も前段に使われた’27も、特性はとても良い。
6H30Piはどうなのかというと、このように全く素晴らしい裸特性を持っている。最大プレート損失は、双三極管で片ユニットあたり7W、片ユニットしか使わないときは10Wまで。内部抵抗はパワー管なみに低く、Ep-Ip特性も非常に綺麗で、直線性が非常に良い。しかも、この真空管はノイズが少なく、海外の高級プリアンプに搭載されていたりする。国内のガレージメーカーもラインアンプに採用しているところがある。 水銀整流管 KX83
設計製作コンセプトと回路’50という2A3や300Bよりも古い時代の真空管を使い、1930年代の回路技術で現在入手容易な部品あるいは手持ちの部品を活用し、シンプルで無調整、メンテナンスフリーのプッシュプルアンプを作る。’50という真空管が現役だった時代には負帰還(NFB)技術も無かったので、もちろん無帰還アンプである。6H30Piという現代の強力なドライバー管を用い、トランスドライブでA2級プッシュプルアンプとする。 トランス類、シャーシ
内部の様子配線は決して綺麗に出来ていないが、メンテナンスがやりやすいようにはなっている。部品点数が少ないので、デールやオーマイトなどの抵抗を多用するなど、音質を左右するCR部品にはこだわった。 特性残留雑音 右ch0.41mV 左0.42mV(後期オリジナル50使用時 83、5Z3で変わらず)
出力:24.5W(8Ω) 0.67V入力(1KHz) 83使用時
18W(8Ω) 0.64V入力(1KHz)5Z3使用時
周波数特性
5Z3使用1W出力時 低域 -1dB 14Hz -3dB12Hz -6dB 10Hz
高域 -1dB 21KHz -3dB33KHz -6dB 48KHz
残留雑音は、出力管を変えると多少上下するが、0.5mV以内におさまるので、実用上、問題ない。
測定して驚いたのは最大出力で、83を使用した実効プレート電圧450VのA1PPならば12Wの動作条件で24.5W、5Z3を使用した実効プレート電圧410Vの条件でも18Wと、思った以上に出力が稼げたことだ。これは、6H30Piという強力なドライバー管とソフトンRC-20というインターステージトランスのご利益で、1:0.9+0.9という低インピーダンスドライブしているためにグリッドプラス動作領域が広いためだと思われる。このくらいの出力がとれるなら、出力の上でも300Bにひけをとらない。事実、私の300BPPアンプの最大出力はAB級で25Wなので、ほとんど変わらない。 周波数特性は、予想通りカマボコであるが、低域はそれなりに充分に伸びているし、高域も無帰還トランスドライブアンプでこの程度なら充分な特性だと思っている。
音質低域が良く締まり、中域が充実している。全体的に力強い豪快な音質。 予算シャーシを自分で穴あけして塗装したので、2014年時点で部品代はステレオ2台で約18万円(出力管を含まず)。音楽とオーディオの部屋 トップページへ |