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        デザイン

   SP盤を電気再生させる目的で手に入れた
    Technics
    SL-1200GAE


     SL-1200GAEの写真
              この写真は、PanasonicのHPより引用させていただきました。


2016年3月26日、朝日新聞朝刊の衝撃的な広告

2台のSL-1200がカラー刷りで写っているが、これ、実物と原寸大の大きさ。1台は1979年発売のSL-1200MK2、もう1台が新発売のSL-1200GAE(シリアルNo0000)
     SL-1200GAE新聞広告
右下には、このように書いてある。

変わることなく、すべてを変えた。名機が、再び産声をあげる。SL-1200GAE。伝統の顔つきとスピリットはそのままに、代名詞であるダイレクトドライブを再定義。設計、筐体、デバイスにいたるまで、あらゆる部分を革新した。Technicsを超えられるのはTechnicsしかない。再び、世界が回りだす

     Rediscover Music/ 

      Technics




祝! Technicsアナログプレーヤーの復活

一時はブランドそのものが消滅していたTechnicsであるが、その看板であったアナログプレーヤーの復活の報は、元気のないオーディオ業界、音楽業界での久々な明るい話題である。78rpmで回すことが出来て、SPレコードを電気再生したいという私自身の要望に完全に応える事が出来て、通常のLPレコードでも高音質再生できる信頼性の高いアナログプレーヤーだと感じた。しかも、その製品の内容が凄いので、思い切って購入する事にした。

2016年4月12日午前10時発売開始からわずか30分で日本国内限定300台が完売となったが、何とか購入できた。



78rpmを回せるのと同時にピッチコントロールが出来てSP盤が聴ける利点

従来のSL-1200がDJ用に多く使われていて、そのデザインを継承したSL-1200GAEでもDJ用途で使えるようにスライド式のピッチコントロールが装備されている。オーディオ・マニアの中からは、DJ用に付けたピッチコントロール用のスライダーが気に食わないという声が聞こえてくる。しかし、DJをやらない音楽愛好家が通常の音楽鑑賞用途で使用する場合でも、ピッチコントロールは不用であるとは言えない。

古いSP盤でしかも1925年以前にアコースティック録音されたものには、明らかに78rpmのままではピッチがおかしくピッチを変えて再生したいものが多く混在する。そういった盤を正しいピッチで再生するためにはピッチコントロールは必須な機能なのだ。長い事使ってきたDENON DP-100も78rpmで回せてピッチを変更できるが、ボタンを押して0.1%ごとにピッチが変わる仕様で、何回も場合によっては何十回もボタンを押さなければならず使いにくい。それと比べてSL-1200GAEのスライダー方式のピッチコントロールはとても使いやすい。この点で、現行発売されている高品位なアナログプレーヤーの中では他に選択枝は無く、SL-1200G/GAEは唯一無二の存在である。SP盤を再生するのに使いたいと思うので、SL-1200GAEに78rpmで回せる機能やピッチコントロール機能が付いていなかったなら、間違いなく私は購入しなかった。

蓄音機を持っているのに電気再生をする理由は、現用中の蓄音機HMV157のサウンドボックスHMV5Aの針圧は他のサウンドボックスと比べて軽いのであるが、それでも125g位あり、片面かけて針を拭くと黒い粉が付くので、間違いなく蓄音機でかける度にSPレコードの溝は削られている。所有するSP盤の中には100年以上前に製造されたものもあるが、そういったSP盤は特に希少ではなく実勢の価格が安いものであっても、もはや貴重な文化財なのだと思うのだ。だから、これからは盤に優しい軽針圧での電気再生でかける機会を多くしたい。そして、大切に聴いたSP盤は次の世代に受け継いでもらえるようにしたいと思う。

付属してきたTechnicsのヘッドシェルにaudio-technica AT-MONO3/SPを取り付け、針圧計を使い5gにする。アンチスケーティングは上限いっぱいかけた状態で使用するが、これで問題はない。AudioTechnica AT-MONO3/SPは、通常のRIAAフォノイコライザを通すと普通にSP盤がバランス良く再生出来るような仕様になっているので、RIAAカーブと異なるSP用のイコライザは要らない。そうやって再生されたSP盤の中には、聴き慣れた蓄音機再生よりも電気再生の方が良いじゃないか、と思わせるものも多々ある。スクラッチノイズは多いが、そのトランジェントが良いので耳に付きにくい。トレースは安定しており、今の所、手持ちのSP盤で針飛びが起きるような事はない。これは冷間引き抜き加工のマグネシウムパイプを装備したアームの出来が相当に良いからだと思う。



LPレコードも、正しく33 1/3rpmで再生してピッチがおかしいものは存在する

LPレコードしか聴かない人の中で、ピッチコントロールは不要だと思っている人は多い。しかし、このようなピッチがおかしいLPレコードもある。例えば、JAZZの名盤であるマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」は、広く一般に知られているように、このアルバムの録音時に若干テープスピードが遅い状態で録音されてしまったため、LPレコードになったときには、A面が本来の演奏よりピッチが高くテンポが速くなってしまっていた。これを本来の演奏ピッチで再生してやろうとしたとき、ピッチコントロールが役立つ。しかもSL-1200GAEではスライダー式で極めて使いやすい。手持ちの「カインド・オブ・ブルー」に関しては、約3%回転を遅くして再生すればほぼ正しいピッチになる。

            カインド・オブ・ブルーLP

こういう盤は、何もJAZZに限らない。私が所有しているクラシックのLPレコードの中にも、ピッチがおかしいものがある。有名なものだと、フルトヴェングラー指揮ウィーンフィルによるベートーヴェンの英雄交響曲、いわゆる「ウラニアのエロイカ」もピッチが高い。だから、ピッチコントロールを使って調節して聴いた方が良い。ピッチコントロールはDJ用だと考えるのは大間違いだ。

    ウラニアのエロイカジャケット    ウラニアのエロイカレーベル



従来のSL-1200シリーズのオーディオ機器としての位置づけ

Technics SL-1200は、1972年にオリジナル機が発売され、最後のSL-1200MK6の発売終了の2010年までに全世界で累計350万台以上販売された。アナログレコードプレーヤーとしてだけでなくオーディオ機器では極めて異例なロングセラー、ベストセラーを記録した、まさにTechnicsの顔のような存在であった。ただ、その位置づけは高級オーディオ機器というより間違いなく中級機であり、値段の割に性能が良く丈夫で、値段の割にそこそこ音質も良いというものでしかなかった。

今までのモデルは、初号機が音楽再生用の中級機という位置づけで始まって、その堅牢性からDJ用途に使われだし代替わりするごとによりDJ用途で使いやすいように変遷していった。堅牢な造りと使いやすさによって、ピュアオーディオ用途というより、DJ機器としての方が有名を馳せた。



SL-1200MK4への思い

SL-1200オリジナル、MK2、MK3、LTD、MK4、MK5、MK6と続いたシリーズの中で、唯一、MK4だけは78rpmで回すことが出来て、SP盤を聴くことが出来る仕様だった。私自身、今までSL-1200シリーズを一度も所有したことは無かったが、78rpmを回せるのと同時にピッチコントロールが出来るという理由でSL-1200MK4だけは気になる存在ではあった。

しかし、私が蓄音機やSP盤を手に入れてSP盤までも楽しむようになったのは2002年以降で、電気再生のためにSL-1200MK4を欲しいと思った2007〜8年ごろにはすでにSL-1200MK5やMK6にモデルチェンジしてしまっていて、中古でしか入手できない状態だった。その残念な思いに対して溜飲を下げる、はるかに高性能なモデルSL-1200GAEの出現は大歓迎だった。



単に復刻、復活ではない! 新しいSL-1200GAEはずっと高性能だ

SL-1200GAEは、アナログLP再生関連の全てのユーザーに対して、あらゆる様々なニーズにSL-1200のデザインのままで最大公約数的に応えたもの。SL-1200GAEは、外見は従来のものにそっくりだし、機能的にも同じ様だが、全く別物のアナログ・プレーヤーであり、フォノモーター、アーム、キャビネット、インシュレータの全てが旧モデルから全く新しいものになっていて、従来のSL-1200と同じなのはデザインとダストカバーだけだ。単にDJ向けではなく、もっとハイクオリティ、ハイグレードで音楽を聴きたい本格的アナログ・オーディオ・マニア向けにも応えたものである。車に例えるなら、トヨタならば、昔のカローラの外見の車体に今の86のエンジンと足回りを装備した車であるように思えるし、ニッサンであれば2004年まで生産されたサニークラスの大衆車がリバイバルし、外見は昔のサニーのままであるが、中身のエンジン、足まわりなどはGT-RやフェアレディZ用の高性能なものが装備された走りや乗り心地が全く異なる車だと思う。まさに羊の皮を被った狼のようなモデルが誕生したようなものなのである。

間違いなく今までのモデルと比べて高性能になり、機能や堅牢性は変えず、今までのモデルのDJ中心のニーズから、新たにもっと音質にこだわる人たちにも充分に満足できるものになった。



主な改善点

フォノモーター
フォノモーターは従来SL-1200のものとは大きく異なり、Technicsが誇ったフォノモーターであるSP-10シリーズの後継としてこれ単体でもSP-10 MK4として発売されてもおかしくないだけの性能を誇る。1980年代半ば頃、私はパイオニアのEXCLUSIVE P-10という当時定価35万円で売られていたレコードプレーヤーを使っていた事がある。そのフォノモーターは単独でEXCLUSIVE EM-10という型番で16万円という価格で販売されていたが、このフォノモーターもコアレスであった。しかし、スペック上、性能はSL-1200GAE搭載のモーターが勝る。ステーター巻線にコアを使わないので通常のDDモーターの欠点とされたコギングが発生しないが、その代償として普通だとトルクが小さくなってしまうのではあるが、SL-1200GAEではトルクを稼ぐためにステーターをローターマグネットが上下に挟み込むような構造になっているなど工夫がなされていて、従来のSL-1200の2倍のトルクを稼いでいる。サーボ回路も現代のデジタル技術をも用いた全く新しいものになっている上に、シャフトやベアリングの精度も向上している。

プラッター
プラッターはSP-10MK3のようにアルミダイキャストに真鍮を張り合わせて振動を防止した上、重量が2倍以上に増して、その重さはSP-10MK2のプラッターよりも重くなっている。SP-10MK3のプラッターの10Kgより軽いけれども、現在の回転制御回路技術を使えばそこまで重くしなくても十分に滑らかな回転が得られるという事なのだろう。プラッター製造時のバランス調整も高精度に行われている。これらによって、S/N比が高く、安定して静かにそして滑らかに回るものになった。

アーム
アームは、パイプ部分に加工が大変でコストが高く付くマグネシウム合金が使われている。それだけではなく、従来のSL-1200と比べ、ベアリングの精度も上がっており、初動感度も高くなって、より微細な音も拾いやすいようなものになっていて、明らかに別物である。初動感度はベアリングにサファイアボールが使われた高級トーンアームで単体で販売されたEPA-100、EPA-100MK2と同等のスペックを持つものになった。ダンプ機能が付けば、EPA-100MK3として単体発売されてもおかしくないほどのものなのだ。

キャビネット
キャビネットは、サイズ、形状は従来のモデルとほぼ同じではあるが、新たに金型を起こしてアルミダイキャスト、BMC、重量ラバー、表面には10mm厚のアルミ材が使われているなど、これらの4層構造になっている。

インシュレータ
インシュレータも、従来のものとは全く異なる高減衰インシュレータを採用している。ダストカバーとゴムマットだけは旧モデルの製造用の金型が残っていたこともあり、旧SL-1200シリーズと同一だ。

結果的に総重量はかなり重いものになった。価格が高くなったがその見返りは充分にあり、特にHi-Fi用途で使用する場合、相当にグレードの高いアナログ再生が出来るものになった。SL-1200GAEはSL-1200のボディをまとったSP-10システムだと見做せるから、もしもTechnicsの昔のレコードプレーヤーと性能を比べるなら、以前のSL-1200ではなく、SP-10MK2、EPA-100、SH-10B3を組み合わせたSL-1000MK2のような、よりハイグレードなオーディオ・マニア向けの高級機種だと思うのだ。