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 ぺるけ式差動ラインアンプ




自作の真空管式パワーアンプをいくつも製作しているうちに、安価な製作費用で組み立てられて、それでいて高性能なラインプリアンプが欲しくなった。昔と違って、今はメインの音楽ソースはCDである。それならばプリアンプなんぞ、いらないではないかという人も居る。しかしながら現実には、通常のパワーアンプにはプリアンプを使用した方が鳴りっぷりの良いものが多い。

ぺるけさんが、これら全てを満たすようなプリアンプをご自身のホームページで発表された。真空管を使ったラインアンプだと、ゲインが2〜4倍程度にするのが難しいが、それを、片側入力で片側出力として差動回路を巧妙に用いることで達成している。特性も良くなりそうだ。昔のフォノイコライザーの付いた普通の真空管式プリアンプはゲインが10倍以上あるのが普通で、CDプレーヤーをメインとしたラインアンプとしては、ゲインが余りすぎる場合があり、困る。このプリアンプはその点使いやすい。



レイアウト


   

使用したケースは10年近く前に自作したもののケースを再利用している。新たに加工し直したが、実は良く見ると底板や裏板に無駄な穴が開いているのがわかるだろう。購入したのが随分前なので型番は忘れていたが、タカチ OS 88-37-23-SSということが判明した。

主な使用部品は、ボリウムがアルプスミニデテント50KΩAカーヴの2連、CRパーツはごく普通の一般品がほとんどで、たまにDALEなど使っているが、昔使った取り外し部品の流用であるからお金はかかっていない。電源トランスは、2次:14V 1.5A、120V 0.15A、24V 0.15Ax2というものを使ったが、このうちの24V巻線は使用せず、120V 0.15Aを倍電圧整流して+B電源を得ているので、電源部の回路はぺるけさんのオリジナルとは異なっている。この電源トランスと2SK30Aは、ぺるけさんから分けてもらった。2SK30Aは特にこのプリアンプのために選別済みだったので、何の手も加えずに適切な動作条件が得られた。

真空管ソケット、セレクター、ミニデテントボリュームが付いている板は3mm厚のアルミLアングルを使って手加工して製作した。真空管は6DJ8族なら何でも使用できるが、SNが良いことや音質的な好みで、現在は、1960年代に蘭PHILIPS HEERLEN工場で製造された金足のSQ管を挿している。

このレイアウトは、既存のシャーシに合わせて、信号系の配線を短くし、ノイズを少しでも減らしたいので電源系と信号系を離したい、というコンセプトで決定した。もともと差動回路は外乱を受けにくい回路であることもあって、普通に製作すればノイズは非常に少なくなると思う。プリアンプは、回路や部品は全く同じであっても、部品配置などでパワーアンプの場合よりも音質に違いが出やすい。経験上、ボリウムやセレクターは、振動しないようにがっちりと取り付けられた方が音質が良い。


回路





完成後の内部

  


  

シャフトは、アルミより真鍮やステンレスなどの重量のあるものの方が、若干音質が良いように思う。

シャシーケースが中古品の再利用なので、ボロがあちこちに見える。リアパネルのヒューズボックスの左側は、以前開けたヒューズボックスの穴を塞ぐダミーである(^^;)。 この位置だと具合が悪かったので、もっと右隅に新たに開けなおしたのだ。尚、底板には、不要なネジ穴がいっぱい開いている。

内部右端に見える銅製のシールド網は、ACの内部配線をシールドしてシャーシにアースし、ACラインからのノイズの飛びつきを押さえようという意図だが、必要だったのかは疑問。

このプリアンプは、SNが極めて良く、Fレンジも広く彫りの深い真空管ならではの音質で、ごくまっとうな音がする。古い年代のCDなどを聴く場合にはこのプリを通して聴く場合が多い。最新鋭のソリッド・ステートのプリアンプだと古い録音の粗だけが目立って音楽が楽しめない場合があるが、このプリだとそのようなことが無い。逆に新しい良い録音のものは解像度の高いソリッド・ステートのプリアンプにはかなわない面があるので、両者を使い分けている。



ヒーター回路の変更

6DJ8族は、ヒーター電圧6.3Vのものであっても、ヒーター電流が0.3Aのものと0.365Aのものがある。常用しているE88CCは0.3Aで、いままでの状態で様々な6DJ8を挿すと、ヒーター電圧が約11V(1本につき5.5V程度)にしかならないものも多い。

そこで、ヒーター回路に入っている3Ωの抵抗をジャンパー出来るようなスイッチを取り付けた。こうすることで、11V程度だったものが12.1V程度に上昇し、全く問題ない電圧になってくれるので、0.3Aのものも0.375Aのものもスイッチで簡単に切り替えられ使用可能になる。挿しかえて遊ぶのに便利だ。スイッチを切り替えれば手持ちの6DJ8、ECC88、6922、E88CC、6ES8、ECC189、いずれも11.8〜12.3V程度に収まるようになるので使用できる。

    
   


6N1P差動プリアンプ

基板を使って6N1P差動プリアンプを作ってみました。6N1Pは6DJ8や6922と類似した球ですが、ヒーター電流が5割多いですし、特性的にも6DJ8や6922とはやや異なり内部抵抗が高く低電圧では使いづらい球です。プレート電圧を200Vと高くし、プレート電流を1ユニットあたり5.5〜6mAと多く流してかなり使える状態になりました。




B電源部のフィルターにチョーク、ダイオードを入れ、プレート電圧約200V、バイアス-3.8〜4.2Vとしています。6N1Pのプレート抵抗20K、カソード抵抗200ΩはDALE RS-2Bを入れています。音質に影響が大きい1uF/400Vの出力コンデンサは、Vintage Vitamin Qです。

電源部のπ型フィルターの抵抗をわずか¥1575の30H・30mAのチョークコイルに交換したときには笑ってしまいました。音場の広がり・聴感上のFレンジの広がり・音の立ち上がりのスピードいずれもとてつもなく良くなってしまいました。チョークの代わりに1KΩ程度の抵抗でもリップルによるノイズ等は無いですし、電圧もほとんど変わりないんですが音質は相当に違うのです。1N5408は1000V3Aですが、これを1Aの1N4007にすると音が細身になります。回路がシンプルなだけに、何かを変えると音質もころころ変化します。








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