F2a11プッシュプルアンプ

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テレフンケンEL156プッシュプルの20年以上前のオーディオ専科の管球アンプキットがあったのだが、保守用も含めた出力管のストックが底をつき、新たに購入するにしてもとんでもなく高価なので、これを同じソケットが流用できるシーメンスF2a11に挿しかえることにした。




写真左側が使用していた中古のテレフンケンEL156で、右側が新品のシーメンスF2a11。ソケットはF2a11専用のものがあるが、スクリーングリッドの位置が違いそのまま差し替えというわけにいかないもののEL156用のソケットがそのまま使える。また、プレート損失や、最大スクリーングリッド電圧などの規格も異なるので、改造にあたっては、+B電圧を下げて最大スクリーングリッド電圧、最大スクリーン損失を超えないような配慮をし、無信号時のプレート損失も最大プレート損失の7割程度で使うことにした。手元にはF2a11が20本ほどあるが、もう作られていない貴重な真空管だし、なるべく長持ちするように配慮した。



まだ使える中古のテレフンケンEL156は4本あるが、これはそのうちにシングルアンプに使って復活させたいと思う。








もともと、このキットの回路はクオード型であったのだが、直結差動型とし、現在とても安価(5814A、6414どちらも1本¥500)に売られている真空管を初段とドライバーに使用した。


最初は、5814A-5814A-F2a11という構成にしようと計画した。5814Aは増幅率が大きすぎず、ゲインの点から見てその方が良いと考えたからだ。ところが実際にやってみるとだぶついたような感じでいい音にならない。もっとシャッキリ感が欲しいので、ゲインが高くなってしまうが、ドライバー管にμが40程度ある6414を使い、オーディオ専科の別のキットの回路などを参考にして、若干NFBを深めにかけて低域を締めたところ、だぶつき感の無い、かなりバランスの良い音質になった。テレフンケンのV69aは、インプットトランスが音を締める役割を担っているのだろう。故伊藤喜多男氏の発表されたこの球と全く同じでソケットの違うF2aのアンプには、初段にE80Fを三極管接続にして使用しているが、これが音を引き締めていて音質的にバランスをとっているように思う。


EL156が挿さっていた時とは音の傾向は違うが、中低域の図太さ、ヨーロッパ系の球らしい高域のしなやかさがあり、やはりテレフンケンのV69aなどのモニターアンプに使用されただけのことはある音の良い球だと改めて感じる。ただ、新規に制作するのなら、カソード巻き線のある出力トランスを用いてカソードNFをかけるような方法でやってみたい気がする。非常に高感度の出力管なのでカソードNFの戻りが大きく効果があると思うからだ。


 2004年8月 少し変更

その後、少し変更を加えた。当初はF2a11に50mA程度しか流していなかったが、40mA〜65mA程度まで変化させて、聴感上の好みから最終的に60mA程度とした。さらに、初段の5814Aとドライバーの6414のB電源デカップリングの75Kに680Kをパラってプレート電圧を55Vから68Vに上げ、それに伴ってドライバーの6414は実効プレート電圧が約154V程度に下がったかわりにバイアスが浅くなり、電流は1ユニットあたり5mA強くらいにした。このほうが以前より音に刺激感が少ない上により締まった強さを感るようになった。ここのデカップリングの抵抗値は直結二段差動の場合、値がちょっと変わるだけで初段、ドライバー段ともに大きく動作点が変化するし、それに伴う聴感上の音質変化も大きい。


2004年9月 ドライバー段を12BH7Aに変更

ドライバー段の真空管を6414から松下製の12BH7Aに変更してみた。これが実に塩梅がいい。音質的にもゲインの点でもかなり満足できる。μは5814Aに近いがドライバー段が5814Aか12BH7Aなのかでは、音の実在感、力感がかなり違っている。トータルゲインが少なくなるので、6414の時のNF抵抗を35Kから25KにしてNFBがしっかりかかるようにし、低域を引き締めた。さらに出力管周りの抵抗の銘柄を、アーレン・ブラッドレーからデールのものに交換し、スクリーングリッドの保護抵抗も100Ωから604Ωとし、F2a11に流すカソードの電流を1本あたり65mAまで増やした。この状態になって力感、滑らかな質感、締まり具合が自分好みのかなり普遍的なバランスになったので、しばらくこのままで様子をみようと思う。0.47uFのカップリングコンデンサの銘柄はEROである。


2005年1月 ドライバー段を6414に戻し変更

ドライバー段を6414に戻し、NFをさらに深くして約14dBかけてみた。この状態が今までで一番良い。ゲインは高いがクリッピングポイント32W時入力が0.45V程度なので何とか許容範囲である。これ以上ゲインが高いと極めて使いにくくかつ音の良いアンプになりにくい。低域がスッキリ延び、中低域が図太く締まり高域はヨーロッパの真空管らしい気品のあるしなやかな音である。








バイアス-B回路は、450V100u、350V680uなど、あり合わせの部品を使ったのでこんな回路になってしまいました。