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ヨーロッパのNOS球のみを使って製作

     EL5/375(4689)QUAD2型アンプ




 




EL5/375(4689)という真空管とその他の使用球について

 
                 EL5/375(4689)                     TELAM AZ-4

EL5/375(4689)はフランスPHILIPSが製造していた五極出力管。球の規模は最大プレート損失18Wなので、米国のビーム管6L6とほぼ同等だが、特性的にはバイアスが浅く使いやすく、見た目は上品で美しい球だ。サイドコンタクトという特殊なソケットが必要で、ピン足は象の爪に似ている。1950年代前半までに製造されたもので、もちろん現在は製造されていない。

EL5/375(4689)は、そもそも保守用の真空管として需要がないし、この真空管を使ってメーカーがアンプを作ることもまず無いので、非常に割安感があった。VALVOブランドだが、inportedの表記がある。フランスPHILIPSで製造されたものがドイツへ輸入されたもののようだ。整流管は、ポーランドのTELAMというメーカーのAZ-4という、球の形が似ていてソケットが同じものを使用した。ヨーロッパ管に多いフィラメント電圧が4Vの直熱整流管である。300V以下なら200mAまで取り出すことが出来るので丁度良い規模だ。


EF80
オリジナルQUAD2型アンプに採用されている前段球はEF86だが、MullardやGECのNOS球はべらぼうに高価なので、EF80という異なる真空管を用いた。EF86とEF80は、名前は似ていて、どちらもシールドを持つMT9ソケットの五極管であるが、全く違う特性を持ち、ピン接続も異なるので挿し換えはできない。

EF80は、もともとは、テレビチューナーなどの高周波増幅に使われたもので、いまどき世界中で真空管テレビを沢山使っているなんていうこともないだろうし、オーディオで使ってあげなければ、ただの粗大ごみだ。自作派はこういう格安でうち捨てられているような真空管を掘り起こして使いたいものだ。この管はVALVOブランドだが、英国MullardのBlackburn工場製。



設計製作コンセプトと回路

オリジナルQUAD2型アンプに採用されているKT66、EF86、GZ32という超高価になってしまったNOS真空管は避けながら、また、中国やロシアで製造されている現行球を使用するのも止めて、廉価で素性の良いヨーロッパ製のNOS球だけを使って、ローコストで高性能、高音質のQUAD2型アンプを製作するという身勝手な計画を立てた。

     
使用球が違うので、細かい回路定数は当然、オリジナルQUAD2型アンプとは違うが、

  1)出力段は多極管を使いオリジナル同様にカソードNFBをかける
  2)前段はQUAD型と言われる位相反転回路を用いる
  3)整流管を使い出力段のプレートにはチョークを通さないで電源供給  SG電源と前段はチョークを通して供給
  4)オーバーオールNFBは、オリジナル(20dB)に近い深いNFBをかける
  5)オリジナル同様、モノラルアンプとするが使用部品は手持ちのものをなるべく活用し、コストをかけ過ぎない

      このように、なるべくオリジナルQUAD2型アンプのテイストを尊重した設計とした。

      参考:オリジナルQUAD2型アンプの回路
     



トランス類、シャーシ

シャーシ       小坂井電子 KS-320
   320mm(W) x 200mm(D) x 40mm(H)



出力トランス     XE-60-5 

電源トランス        GS-2819 

チョーク・コイル    TC-60-35 

    いずれも、TANGOの現行既製品



内部の様子

 

配線は決して綺麗に出来ていないが、メンテナンスがやりやすいようにはなっている。部品点数が少ないので、音質を左右するCR部品にはこだわった。



特性

無帰還        95mV入力   約12W    残留雑音1.1mV両chとも
 
NFB 約18dB    0.75V入力   約12W    残留雑音 Lch 0.22mV  Rch 0.21mV
             10KHzの方形波応答を観ながら、2400pFのディップマイカコンデンサを抱かせ位相補正をした。
 
周波数特性(NFB 約18dB)
      Rch   高域 -3dB 100KHz  -6dB 167KHz  低域 10Hzまでほぼフラット  1KHz(2.8V出力時)
      Lch   高域 -3dB 98KHz   -6dB 165KHz  低域 10Hzまでほぼフラット  1KHz(2.8V出力時)
 
TANGO XE-60-5は非常に優秀なトランスだ。これだけの位相補正だけで、600KHzまでほぼなだらかに減衰し、大きなピークやディップが出来ない。



音質

低域が良く締まり、躍動感があり音抜けが良い。透明感があり切れ込み良く、それで居てヨーロッパ的な端正さも合わせ持つ。Tannoyとは相性が良く、WestminsterでもStiringでもかなり鳴りっぷりは良い。




予算

真空管が廉価なのと、シャーシを自分で穴あけして塗装したので、2013年時点で部品代はステレオ2台で約18万円。出力トランスだけで7万円弱、トランス類のコストが全体の約6割を占める。



QUAD2型アンプについて

QUAD2型アンプが発表されたのが1950年代の終わりごろだが、この位相反転回路の解析については、最近も技術誌で解析や考察が行われていた。ネット上でも、沢山の考察がある。

雑感:「上杉佳郎:807pp高性能メイン・アンプの設計・製作」
 
以上の解説では、スクリーン結合が平衡性の重要なポイントであると結論づけられている。
 
しかし、こういう解析・考察もある。こちらが正しいと思う。上杉先生でさえ間違うのだから、私ごとき素人には、完全に理解しろと言われてもまず無理だ。
 
一日一回路 vol.3
http://www.ne.jp/asahi/evo/amp/1d1c/3  より以下を引用。
2005/1/1
新BBS立上げ記念 新年特別寄稿
  1. 位相反転の方式は初段のプレート出力を2段目で反転増幅する古典型である。
  2. 特徴は初段のカソードに2段目カソードから正帰還信号を与えて、初段のゲインを高めていることである。
  3. 初段と2段目のスクリーングリッド結合は必ずしも不可欠なものではない。
2.の初段のカソードに2段目カソードから正帰還信号を与えて、初段のゲインを高めている、というのがミソだと思う。オーバーオールのNFBを増減するとACバランスが崩れるのは、この正帰還も増減されるわけで、当然、初段の増幅度が変化すれば、負荷分割抵抗がそれにつれて最適値が変わってしまうわけだ。QUAD2型アンプを一から設計して製作する場合、先にNFBをかけて後からACバランスをとらなければいけない。


尚、製作にあたっては、6CW5と12AU6を使いQUAD2アンプの勉強のためにローコストな試作機を製作した。それを含め、このアンプの製作過程は、こちらに載せている。

ものぐさオーディオの日記 QUAD2
http://blogs.yahoo.co.jp/asd2251sxl2001sax2251/folder/1049078.html

QUAD2型のアンプを違う真空管や特性の異なる出力トランスを使ってアマチュアが新規に設計して作ろうとすると、結構難しい。製作してみて、QUAD2型の回路はシンプルだが非常に奥が深い回路だと感じた。それでいて音質も良い。オリジナルの設計者のピーター・ウォーカーは偉大だったと改めて思う。



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